第 6 問   次の文章を読み、下の問い (A・ B) に答えよ。なお、文章の左にある(1) 〜 (6) はパラグラフ(段落) の番号を表している。(配点  36)

 

 

 

本文省略 

 

 

A    次の問い (問 1〜5) の       47       〜        51       に入れるのに最も適当なものを、それぞれ下の ① 〜 ④ のうちから一つずつ選べ。

 

 

問1  Which of these statements is true according to paragraph (2) ?         47      

 

①  Opera develops by adapting to new conditions.

②  Opera fans thank celebrities for performing.

③  Opera singers avoid singing on TV and in films.

④  Opera singers' life stories are dramatic.

 

正解: ①

  

長い論説文を読んで5つの問に答える問題。問1〜4はそれぞれどのパラグラフに関する問題か指定されているので、まず問題文を読み、その後、指定されたパラグラフを読んで解答を導き出すようにする。問5は論説文全体に関する問題なので、問1〜4で読んだ文章の内容から答えを判断する。もし、それだけでは判断できない、または自信がない場合は読んでないパラグラフにも素早く目を通して判断するようにしよう。

 

現実的な英語の運用の中では、どのパラグラフに知りたい情報が含まれているかということを誰かが知らせてくれることはないので、この問題は英語の実用能力を査定するというよりも、論説文読解能力を養うための学習指導のような設問になっている。

 

問1  パラグラフ(2)によると、次の記述のうち正しいのはどれか。         47      

 

①  オペラは新しい状況に適応することで発展する

②  オペラのファンは有名人が演じることに感謝している

③  オペラ歌手はテレビや映画に出て歌うことを避ける

④  オペラ歌手の生涯の物語は劇的だ

 

第2パラグラフの第4文がこの問題の解答を示している。

 

Over the years, it has responded to various musical and theatrical developments around the world and continues to do so.

 (長年にわたってオペラは世界の様々な音楽や演劇の発展に応じてきており、それを続けている)

 

"it" (それ) は、直前の文の主語である"opera" を指す。オペラが長年にわたって状況の変化に対応し続けており、現在も変化に応じて発展していることがわかる。したがって ① が正解である。

 

② については、"celebrities" (有名人) に関する記述があるのは最後の文である。

 

Some singers have become celebrities thanks to performing on radio, on television, and in the cinema.

(ラジオやテレビ、映画に出演したおかげで有名人になった歌手もいる)

 

"thanks to" という表現を正しく理解できればこの選択肢が誤りであることがわかる。"thanks to" とは、「感謝する」ということではなく、「〜 のおかげで」という意味である。なお、"singers" (歌手) とはオペラ歌手のことである。

 

※ "perform" (演じる) の後に続く前置詞は、メディアの種類によって違うので注意が必要。 "radio" と "television" の場合は "on" を使い、"the cinema" の場合は "in" を使う。

 

※ 本文中では、映画のことを"the cinema" と表現し、選択肢では"films" と呼んでいる。同じ意味だが、違う単語を使って言い換えているので気をつけよう。

 

③ についても第2最後の文で誤りであると判断できる。本文ではラジオ、テレビ、映画に出演するオペラ歌手がいると述べられている。

 

 については、"dramatic" という単語が使われているのは第2文である。

 

It uses music, words, and actions to bring a dramatic story to life.

(それは音楽と言葉、演技を使って演劇の物語をいきいきとさせる)

 

本文と選択肢 ④ では、以下の2点で内容が異なっている。

1.本文の "story to life" と選択肢の "life stories" の意味が異なる

2.本文と選択肢で使われている "dramatic" という単語の意味が異なる

 

本文中では、"bring a dramatic story to life" と述べられている。"bring 〜 to life" は、「〜 を生き生きとさせる、〜に活気を与える」という意味であり、"dramatic" は「演劇の」という意味で使われている。したがって日本語にすると

 

それは音楽と言葉、演技を使って演劇の物語をいきいきとさせる

 

という意味になる。"it" (それ) は、"opera" のことである。音楽、言葉、演技を使って演劇の内容をいきいきと表現する芸術の形式がオペラなのである。

 

本文とは違って、選択肢の "life story" は、「(オペラ歌手自身の)人生の物語」という意味で、 "dramatic" は「劇的な、ドラマチックな」という意味で使われている。

 

本文と選択肢の両方で同じ単語が使われているから似たような内容だと勘違いするかもしれないが、本文では「演劇をいきいきとさせる」と言っているのに対して、選択肢では「人生がドラマチックだ」と言っている。内容の違いに気をつけよう。

 

※ bring 〜 to life  で、「〜 を生き生きとさせる、〜に活気を与える」 

※ dramatic 「劇的な、わくわくする、演劇の」

"dramatic event"は「劇的な事件(出来事)」という意味だが、 "dramatic coach" は「ドラマチックな(劇的な)コーチ」ではなく、「演劇のコーチ(演劇指導者)」という意味である。前後のつながりによって "dramatic" という単語の意味がかわるので注意しよう。

  

 

問2  In paragraph (3), what is another way of asking the question "But what about opera singers? "  

       48      

 

①  How do opera singers prepare?

②  How should we use opera singers?

③  What are opera singers worth?

④  What sums do opera singers pay?

 

正解: ③

 

問2  パラグラフ (3) で、「しかしオペラ歌手はどうだろうか」という質問の別の言い方はどれか。       48      

 

①  オペラ歌手はどのように準備するか

②  私たちはオペラ歌手をどう使うべきか

③  オペラ歌手はどれだけの価値があるか

④  オペラ歌手は総額いくら支払うか

 

文脈を正しく理解できているかを問う問題。問題文には解答を確定するための具体的な表現が含まれていないので、問われている表現の前の内容と該当の箇所がどのような意味で、どうつながっているかを正しく把握する必要がある。

 

このパラグラフでは、近年のオペラがかかえる困難について述べられている。それは経済的な問題とそれに起因したオペラ歌手の報酬についてである。問題で問われている下線部の直前に下記の文があり、この文と該当文とのつながりを理解すると解答が得られる。

 

Society seems to accept the large salaries paid to business managers and the multi-million-dollor contracts given to sports athletes.  

(世間は企業経営者への多額の給与やスポーツ選手への数百万ドルの契約を受け入れているようである)

 

上記の文の後に、"But what about opera singers?" (しかしオペラ歌手はどうだろうか) という文が続く。つまり、企業経営者やスポーツ選手が高収入であることを世間の人々は認めているが、オペラ歌手が高額の報酬を得ることを世間は受け入れるか、ということを問いかける内容である。したがって ③ が正解である。

 

① については、"prepare" (準備する) に該当する記述が本文に見当たらない。② も"use opera singers" (オペラ歌手を使う) が本文に一致する箇所がない。④ は報酬について述べられているようであるが、 "opera singers pay" (オペラ歌手が支払う) となっており、本文で述べられている「オペラ歌手が受け取る報酬」とは異なっている。したがってこれも不正解である。

 

※ あまり重用ではないが、この設問には単純なミスがある。設問で引用されている下線部には "But" が含まれているが、選択肢にはそれに該当する単語が含まれていない。下線部と選択肢の意味的な一致を問うのであれば、"what about opera singers?" のみに下線を引くか、各選択肢の最初に "But" をつけるか、いずれかの修正が必要である。

 

 

問3  According to paragraphs (3) and (4), which statement is true?         49      

 

①  Opera singers are financially unstable.

②  Opera singers ask only the wealthy to attend.

③  Opera singers get paid before the show.

④  Opera singers perform better if they are poor.

 

正解: ①

 

問3  パラグラフ (3)、(4) によると、どの記述が正しいか。       49      

 

①  オペラ歌手は経済的に不安定である

②  オペラ歌手は裕福な人だけに観にくるように求めている

③  オペラ歌手は公演が始まる前に給料を受け取る

④  オペラ歌手は貧乏な方がより良い公演をする

 

この問は、問1、問2のように設問に関する決定的な記述を本文から1ヶ所探し出して解答を得る、というものではない。指定のパラグラフの中から答えを得るための判断材料をいくつか探して解答を導き出す必要がある。

 

オペラ歌手の収入について、パラグラフ(4) の第3文、第5文、第6文に下記のように説明されている。

 

They typically receive nothing during the many weeks of rehearsal before a show starts.

(彼らは公演前の何週間ものリハーサル期間中は一般的になにも受け取らない)

 

If they become ill or cancel their performance, they lose their performance fee.

(もし、彼らが病気になったり出演をキャンセルしたりすると、出演料を失う)

 

The insecurity of this system puts the future of opera at risk.

(この仕組みの不安定さによりオペラの将来が危険にさらされている)

 

上記より、オペラの主演歌手は、長いリハーサル期間中に収入が一切なく、病気になったり出演をキャンセルしたりすると出演料を受け取ることができない仕組みになっていて、この経済的不安定さのためにオペラの将来が危険にさらされている、ということがわかる。

 

したがって、① が解答であると判断する。

 

② については関連する記述が一切ない。③ についてはパラグラフ(4) の第2文で下記のように述べられている。

 

Principal singers are generally paid performance fees once they complete a show.

(主演歌手は概して公演を完了した後に出演料が支払われる)

 

選択肢 ③ では "get paid before the show" (公演前に給料を受け取る) となっているが、本文には逆のことが書かれているので不正解である。

 

④ に関連する記述は、パラグラフ(3) の最後に触れられている。

 

"people have the idea that artists can be creative only if they suffer in poverty"

(芸術家は貧困を耐え忍んでこそ創造的になれる、と人々は考える)

 

しかし、その直後にそれを否定する下記の記述が続き、これが著者の考えを表している。

 

"but this is unrealistic: If artists, including opera singers, lack the support they need, valuable talent is wasted"

(しかし、これは非現実的だ。もし、オペラ歌手を含む芸術家が、必要とする支援を得られなければ、貴重な才能が無駄になるのだ)

 

したがって、本文の内容は選択肢 ④ と全く逆で、正しくないことがわかる。 

 

 

問4 Which statement best expresses the author's opinion in paragraph (5)         50      

 

①  Audiences know best how opera should be performed.

②  Microphones should be used to make opera more enjoyable.

③  Opera singer's voices should be valued more than their looks.

④  Popular culture has had a positive influence on opera.

 

正解: ③

 

問4  パラグラフ(5) の著者の意見を最もよく表現しているのはどれか。       50      

 

①  オペラがどう演じられるべきかは観客が一番良く知っている

②  オペラをより楽しめるようにするためにマイクが使われるべきだ

③  オペラ歌手の声は外見よりも尊重されるべきだ

④  大衆文化はオペラに良い影響を与えてきた

 

パラグラフ(5) の最後の文で以下のように述べられている。

 

Emphasizing physical appearance over singing ability may cause audiences to miss out on the human voice at its best.

(歌唱力よりも身体的外見を重視してしまうと、観客は最高の状態の人間の声を聴く機会を逃してしまうかもしれない)

 

歌手の歌唱力よりも外見を重視すると、オペラに最も期待されている最高の歌声を聞けなくなってしまうかもしれない、というが危惧が述べられている。オペラ歌手にはポップ歌手とは違って、外見よりも歌声により価値を置くべきだと著者が主張していることが理解できる。従って③が正解となる。

 

この前の文でも、オペラ歌手が外見と歌声の両方で観客を魅了することが困難である理由について、以下のように述べられている。これも③が正解であるとする根拠を補強する材料となる。

 

Opera singers simply cannot make a sound big enough to fill a large theater or concert hall without a microphone if their body weight is too low.

(オペラ歌手は体重が軽すぎると、マイクなしで大きな劇場やコンサートホールに響き渡る大きな声を出すことが決してできない)

 

上記の文で、マイクについて触れられている。痩せているとマイクなしで広い会場に声を響き渡らせる事ができないのでマイクを使うべきである、と解釈してしまうかもしれない。しかし、マイクの使用を著者が肯定する根拠が何も述べられていないので②を正解だと判断することはできない。逆にオペラ歌手は大きな声を出すために多少太っていても当然である、と著者が考えていると判断すべきである。従って②は正解とはならない。

 

①、④については、むしろ本文とは逆の内容になっている。第3文、第4文で下記の通り、大衆文化に影響された外見を重視する観客の要望は非現実的で、有害であると述べられている。従って③、④は不正解である。

 

Therefore, opera singers, performing to audiences influenced by this popular culture, are now expected to be "models who sing."  These demands may be unrealistic and possibly harmful.

(従って、この大衆文化に影響された観客に向けて演じるオペラ歌手たちは、今や「歌うモデル」であることが求められている。このような要求は非現実的であり、有害にさえなり得る)

 

 

問5 What would be the best title for this passage?         51      

 

①  How to Make Money in Opera

②  Opera as a Part of Popular Culture

③  The Difficulties Facing Opera

④  The Historical Context of Opera

 

正解: ③

 

問5  この一節に最適な題名はなにか。       51      

 

①  オペラで金儲けをする方法

②  大衆文化の一部としてのオペラ

③  オペラが直面する困難

④  オペラの歴史的背景

 

第6問の問題文全体で主に何が述べられているかを把握する問題。第3、第4パラグラフで経済的な問題について、第5パラグラフで大衆文化に影響を受けた観客によるオペラ歌手への困難な要望について述べられている。本文全体として、現在のオペラが抱える問題点について述べられている分量が多いので、③ が正解であると判断する。

 

※ 本文全体で一貫してオペラが直面する困難について述べられているわけではないことに注意しよう。全体としてはまとまりのない文章になっているが、全体の中で③に関する部分が多いことと、他の選択肢が適切でない、という消極的な理由で③が正解となる。(「正解」とは言っているが、「正しい題名」というよりもあくまでほかの3つと比較するとこれより良い題名がない、というだけである)

 

① については、第2パラグラフの最後の文に、

Some singers have become celebrities thanks to performing on radio, on television, and in the cinema.

(ラジオやテレビ、映画に出演したおかげで有名人になった歌手もいる)

 

と述べられている。テレビなどに出演してお金儲けをしたオペラ歌手がいると想像でき、ここが①の内容に近いとも考えられるが、これ以上のことは何も説明されていない。また、第3パラグラフからは逆に経済的な問題点について述べられているので、本文全体の題名としては①は不適格である。

 

②については、第5パラグラフに大衆文化の影響を受けた観客からオペラ歌手に対して、ポップ歌手と同様に「歌うモデル」であることを求められることが述べられている。しかし、著者はこれに対して"unrealistic" (非現実的) で "harmful" (有害) にさえなり得ると述べ、否定的である。また、大衆文化とオペラの関係性について述べられているのはこのパラグラフだけである。従ってこれも不正解である。

 

④については、第2パラグラフで述べられている。オペラの起源やその後の変遷などが簡単に述べられているが、他のパラグラフでは触れられていないので、これも本文全体の題名にはなりえない。

 

B    次の表は、本文のパラグラフ(段落) ごとの内容をまとめたものである。       52       〜 

       55       に入れるのに最も適当なものを、下の① 〜 ④ のうちから一つずつ選び、表を完成させよ。ただし、同じものを繰り返し選んではいけない。

 

 

Paragraph Content
(1) Introducing opera
(2)        52       
(3)        53       
(4)        54       
(5)        55       
(6) Prospects for opera

 

①  Effect of world finance on opera

②  Impact of popular culture on opera

③  Opera from the past to the present

④  Problems in money management

 

正解: 52  ③,     53  ①,     54  ④,     55  ②

 

①  オペラに対する世界経済の影響

②  オペラに対する大衆文化の衝撃

③  過去から現在のオペラ

④  資金管理の問題

 

各パラグラフの要旨を把握する問題。第6問 A と本文が共通なので、A で正しく解答できていればここではあまり苦労しなくてすむ。逆に、 A の解答にあまり自信がなかったら、この問題の選択肢がA の問題に対するヒントになるので、A と B の設問・選択肢を比較しながら解答するように心がけると良い。

 

第2パラグラフでは第3文、第4文で、

Opera started in Italy at the end of the 16th century and later became popular throughout Europe.

(オペラは16世紀末にイタリアで始まり、のちにヨーロッパ中で人気となった)

 

Over the years, it has responded to various musical and theatrical developments around the world and continues to do so.

(長年にわたってオペラは世界の様々な音楽や演劇の発展に応じてきており、それを続けている)

 

と述べ、オペラの起源とその後の発展に触れている。更に、最近数十年でより多くの観客がオペラを知るようになり、オペラ歌手がラジオ、テレビなどに出演するようになったと述べている。オペラの始まりから現在までを大雑把に紹介しているので、③が第2パラグラフの内容と合致する。

 

 

第3パラグラフでは、世界経済の停滞とそれに起因するオペラ歌手の報酬に関する課題が述べられている。

 

第1文、第4文で以下のように述べられている。

opera has been facing serious challenges

(オペラは深刻な課題に直面している)

 

The current world economic slowdown has meant that less money is available for cultural institutions and artists.

(現在の世界経済の停滞は、文化施設や芸術家のために使えるお金がより少なくなることを意味している)

 

上記2文を中心とした第3パラグラフ前半部分が選択肢 ① に対応している。したがって ① が正解である。

 

④ もお金の問題に関するものだが、① が「世界経済」に関するもので、④ がお金の「管理」に関するものだという違いがある。そのため、第3パラグラフは ④ は不適格で、① がより適切な答えであると判断する。

 

 

第4パラグラフでは、オペラ界におけるお金の管理方法の問題点について述べられている。

 

第1文と最終文で以下のように述べられている。

the way money is managed in the opera world has led to hardships

(オペラ界でのお金の管理方法により困難がもたらされた)

 

The insecurity of this system puts the future of opera at risk.

(この仕組みの不安定さによりオペラの将来が危険にさらされている)

 

このパラグラフでは、オペラ界における歌手への報酬支払の仕組みに問題があることを指摘している。したがって、④ がこのパラグラフの内容に該当する。

 

 

第5パラグラフでは、大衆文化に影響された観客のオペラ歌手への非現実的な要望の問題点が指摘されている。

 

第3文、第4文、最終文で以下のように述べられている。

opera singers, performing to audiences influenced by this popular culture, are now expected to be "models who sing"

(この大衆文化に影響された観客に向けて演じるオペラ歌手たちは、今や「歌うモデル」であることが求められている。)

 

These demands may be unrealistic and possibly harmful.

(このような要求は非現実的であり、有害にさえなり得る)

 

Emphasizing physical appearance over singing ability may cause audiences to miss out on the human voice at its best.

(歌唱力よりも身体的外見を重視してしまうと、観客は最高の状態の人間の声を聴く機会を逃してしまうかもしれない)

 

以上より、② が第5パラグラフの内容にあてはまる。

 

各パラグラフは次のような内容となっている。 

【第1パラグラフ】オペラの素晴らしさ

【第2パラグラフ】オペラの起源と現在までの変遷

【第3パラグラフ】世界経済の低迷とオペラ歌手への報酬の課題

【第4パラグラフ】オペラ界の報酬制度の問題点

第5パラグラフ】大衆文化の影響

【第6パラグラフ】今後の展望

 

 

第6問 B は、各パラグラフの大まかな意味が理解できていれば満点をとることもそれほど難しくない。第3、第4パラグラフの内容が少し似ていて迷うかも知れないが、第3パラグラフの"world economic slowdown" (世界経済の停滞)、第4パラグラフの"the way money is managed" (お金の管理方法) などの重要な箇所やそれに関連した内容を理解できればこの2つのパラグラフの違いに気づくことができる。

 

長い文章を読むことがどうしても苦手な人は、各パラグラフの第一文を根気よく読むことと、知っている単語をできるだけ多く探して、パラグラフの内容を想像することを心がけよう。センター試験では、常識から大きくかけ離れた内容が出題されることは少ないので、どうしても分からなければ常識と想像力で判断すると良い。

 

【全訳】

(1)  オペラは表現力の最高水準にある人間の声を讃える芸術形式である。ほかのどの芸術形式もオペラのように興奮を創り出し、感動させることはない。優れた歌手が演じた場合は特に顕著である。そのような歌手たちは、人間の声にとって最も素晴らしく、そして最も困難に作曲されてきた音楽のいくつかを披露するように訓練されている。

 

(2)  オペラは西洋古典音楽の伝統の重用な一部である。それは音楽と言葉、演技を使って演劇の物語をいきいきとさせる。オペラは16世紀末にイタリアで始まり、のちにヨーロッパ中で人気となった。長年にわたってオペラは世界の様々な音楽や演劇の発展に応じてきており、それを続けている。最近数十年間は、現代の録音技術を通してより幅広い観客がオペラを知るようになった。ラジオやテレビ、映画に出演したおかげで有名人になった歌手もいる。

 

(3)  しかし、近年、オペラは深刻な課題に直面している。その原因のいくつかはなすすべがないことである。オペラがかかえる現在の課題のひとつは経済的なことである。現在の世界経済の停滞は、文化施設や芸術家のために使えるお金がより少なくなることを意味している。この資金不足により、オペラ歌手や他の芸術家たちの支援にどれだけの報酬が支払われるべきか、という幅広い問いかけが浮上している。世間は企業経営者への多額の給与やスポーツ選手への数百万ドルの契約を受け入れているようである。しかし、オペラ歌手はどうだろうか。どういうわけか、芸術家は貧困を耐え忍んでこそ創造的になれる、と人々は考えるが、これは非現実的である。もし、オペラ歌手を含む芸術家が、必要とする支援を得られなければ、貴重な才能が無駄になるのだ。

 

(4)  資金不足だけでなく、オペラ界でのお金の管理方法もまた困難をもたらしている。主演歌手は概して公演を完了した後に出演料が支払われる。彼らは公演前の何週間ものリハーサル期間中は一般的になにも受け取らない。役の準備をするために、彼らはレッスンやコーチングセッションの費用を支払わなければならない。もし、彼らが病気になったり出演を中止したりすると出演料を失う。この仕組みの不安定さによりオペラの将来が危険にさらされている。

 

(5)  オペラが直面しているもう一つの問題は、大衆娯楽に影響された観客の要望にどのように応えるかということだ。流行歌手はしばしば、彼らの歌唱力と同じぐらい外見に基づいた評価も受ける。それため、この大衆文化に影響された観客に向けて演じるオペラ歌手たちは、今や「歌うモデル」であることが求められている。このような要求は非現実的であり、有害にさえなり得る。オペラ歌手は体重が軽すぎると、マイクなしで大きな劇場やコンサートホールに響き渡る大きな声を出すことが決してできない。歌唱力よりも身体的外見を重視してしまうと、観客は最高の状態の人間の声を聴く機会を逃してしまうかもしれない。

 

(6)  オペラの問題に簡単な解決策はなく、オペラの価値については多くの異なる見解がある。しかし、毎年多くの若者がこの特別な芸術形式で自身の才能を発展させる望みと夢を抱いて音楽科を履修している。オペラが多くの障害を切り抜けてきて、若い世代を魅了し続けている事実は、それが価値にあふれ、尊敬される芸術形式であり続けるということを実証している。

 

【単語】

第1パラグラフ

operaプラ]/άp(ə)rə/ (オペラ)、

artートゥ]/άɚt/ (芸術)、

formフォーム]/fˈɔɚm/ (形式、形態)、

celebrateレブイトゥ]/séləbrèɪt/ (褒めたたえる、祝う)、

 

※ "celebrate" は次の例文のように「祝う、祝福する」の意味で覚えていることが多いだろう。

We celebrated his 18th birthday.  (私たちは彼の18才の誕生日を祝った)

 

しかし、「祝う」以外に、本文のように「褒めたたえる、賞賛する」という意味もある。この意味も覚えておきたい。

 

humanヒューマン]/hjúːmən/ (人間、人間の)、

voiceイス]/vˈɔɪs/ (声、音声)、

expressionエクスプシュン]/ekspréʃən/ (表現)、

 

※ 本文全体の第1文は、文の内容も言い回しもすんなり理解するのは難しいかもしれない。

Opera is an art form that celebrates the human voice at its highest level of expression.

(オペラは表現力の最高水準にある人間の声を讃える芸術形式である。)

 

オペラという芸術を端的に表現した一文であり、含蓄があるように思われる。

 

"opera is an art form" で「オペラは芸術形式である」と言っている。それがどのようなものかを "that" 以下で説明している。

 

"celebrates the human voice at its highest level of expression" で、「表現力の最高水準にある人間の声を讃える」とオペラの芸術形式を表現している。

 

"celebrates the human voice" で、「人間の声を讃える」と言っているが、その「人間の声」はどんな声でも良いというわけではない。

 

"highest level of expression" 「表現力の最高水準」の声でなければ、オペラという芸術にはなりえないのである。

 

オペラとは、最高水準まで訓練され、鍛えられた人間の声でこそ創り上げることができる芸術である、と述べている。

 

createクリイトゥ]/kríːeɪt/ (創造する、作り出す)、

excitementエクイトゥメントゥ]/eksάɪtmənt/ (興奮)、

moveーブ]/múːv/ (揺り動かす、感動させる)、

 

※ 本文中では、"move the heart" という形で使われている。「心を揺り動かす、感動させる」という意味。

 

第2文の "No other art form creates excitement and moves the heart in the way that opera does" も少し難しいと感じるかもしれない。"no other 〜 creates excitement and moves the heart" とは、「他のどの 〜 も興奮を創り出し、感動させることはない」(オペラだけがそれほどの興奮を創り出し、感動させることができる)という意味。

 

本文では文の最初に "no"が付いていて否定の内容になっているが、次の文のように "no" がない平叙文であれば理解するのはそれほど難しくないと思われる。

 

other art forms create excitement and move the heart (他の芸術形式は興奮を創り出し、感動させる)

 

この文の最初に "no" を付けて文全体を否定する形になっているのが本文の第2文である。これで、他のどの芸術形式もオペラのように興奮を創り出し、感動させることはない( = これだけの興奮を創り出し、感動させることができるのはオペラだけだ)という意味になる。

 

in the way that opera does (オペラがするような方法で)

"in the way" で、「方法で」、"that opera does" で、「オペラがする」となる。 

 

especiallyエスシャリィ]/espéʃəli/ (特に)、

performフォーム]/pɚfˈɔɚm/ (演じる)、

trainトゥイン] /treɪn/ (訓練する)/kəmpˈəʊz/

 

※ この単語は「列車」と同じスペル、同じ発音 (homonym / 同音異義語) である。

 

presentプリントゥ]/prɪzént/ (表現する、上演する)、

challengingチャレンジン]/tʃǽləndʒɪŋ/ (困難だがやりがいのある、能力を必要とするような)

compose[コンウズ]/kəmpˈəʊz/ (作曲する)、

 

第2パラグラフ 

classicalスィカウ]/klˈæsɪk(ə)l/ (古典の)

 

※ 日本語では古典音楽のことを「クラシック音楽」と言うことがあるが、英語では "classical music" となる。違いに気をつけよう。

 

traditionトゥラディション]/trədíʃən/ (伝統)

dramaticドゥラティック]/drəmˈæṭɪk/(劇的な、わくわくする、演劇の)、

bring 〜 to life (〜 を生き生きとさせる、〜に活気を与える)、

over the years (長年にわたって)、

respondリスンドゥ]/rɪspάnd/ (応じる、対応する)、

variousリアス]/vé(ə)riəs/ (様々な)、

musicalミューズィカウ]/mjúːzɪk(ə)l/ (音楽の)、

theatricalスィトゥリカウ]/θiˈætrɪk(ə)l/ (演劇の)、

developmentディロプメントゥ]/dɪvéləpmənt/ (発展)、

decadeケイドゥ]/dékeɪd/ (十年間)

 

※ 本文中では、"in recent decades" という形で使われている。"decades" と複数形になっているので、「最近数十年の間で」という意味になる。

 

audienceーディアンス]/ˈɔːdiəns/ (観客)、

introduceイントゥロデュース]/ìntrəd(j)úːs/ (紹介する、広める)

 

※ 本文では、"much wider audiences have been introduced to opera" という形で使われている。そのまま訳すと、「より幅広い観客がオペラに紹介された」となる。このままだと日本語としてぎこちなく、意味もよくわからない。"introduced" を「引き合わされる、知るようになる」と解釈すると良い。全訳では、「より幅広い観客がオペラを知るようになった」とした。

 

recordingーディン]/rɪkˈɔɚdɪŋ/ (録音、録画)

 

※ record (記録する、録音する、録画する) の 〜ing 形

 

technologyテクロジイ]/teknάlədʒi/ (技術)、

celebrityブリティ]/səlébrəṭi/ (有名人、著名人)

 

※ 日本語の「セレブ」は英語の "celebrity" が元になっている。

 

cinemaスィネマ]/sínəmə/ (映画)

 

第3パラグラフ 

faceフェイス]/feɪs/ (直面する)、

seriousスィリアス]/sí(ə)riəs/ (深刻な)、

challengeチャレンジ]/tʃˈælɪndʒ/ (課題、挑戦)、

causeーズ]/kˈɔːz/ (原因)

beyondンドゥ]/bɪ(j)άnd/ (〜を越えて)、

controlコントゥール]/kənˈt(ʃ)roʊl/ (管理、制御)

 

※ "beyond control" (制御を越えて) =「制御不能で」、「なすすべがない」という意味

 

currentレントゥ]/kˈɚːrənt/ (現在の)、

economicエコミック]/èkənάmɪk/ (経済の)、

slowdownウダウン]/slóʊdàʊn/ (後退、低迷)、

moneyニー]/mˈʌni/ (お金、通貨)

 

※ この単語は発音に要注意。

日本では、「マネー」と発音するが、英語ではニー]/mˈʌni/ である。簡単な単語だが、間違って覚えている人も多い。外国人に対して「マネー」と言っても日本語がわかる人以外には通じないので気をつけよう。

 

availableイラブウ]/əvéɪləbl/ (利用できる)

 

※ 本文では、"less money is available" という形で使われている "less money" (より少ないお金) が利用できる、 とは、使えるお金以前よりが減っている、という意味。

 

culturalルチュラウ]/kˈʌltʃ(ə)rəl/ (文化の、文化的な)、

institutionインスティテューション]/ìnstət(j)úːʃən/ (施設)、

artistーティストゥ]/άɚṭɪst/ (芸術家)、

shortageショーテッジ]/ʃˈɔɚṭɪdʒ/ (不足)、

broaderーダ]/brɔ́dɚ/ (より幅広い)  broad (幅広い) の比較級、

support[サートゥ/səpˈɔɚt/ (支援する)、

society[サイエティ/səsάɪəṭi/ (社会)、

accept[アクプトゥ/æksépt/ (受け入れる)、

salaryラリ/sˈæl(ə)ri/ (給料)、

managerニジャア/mˈænɪdʒɚ/ (経営者、支配人)、

multi-millionルティリアン/mʌ̀ltàɪmɪ́ljən/ (数百万の)、

contractントゥラクトゥ/kάntrækt/ (契約)、

athleteスリートゥ/ˈæθliːt/ (運動選手、競技者)、

somehowムハウ/sˈʌmhὰʊ/ (どういうわけか、どうにかして)、

creative[クリイティブ/kriéɪṭɪv/ (創造的な)、

sufferファ/sˈʌfɚ/ (苦しむ、耐える)、

povertyバティ/pάvɚṭi/ (貧困)、

unrealistic[アンスティック/`ʌnrìːəlístɪk/ (非現実的な)、

including[インクーディン/ɪnklúːdɪŋ/ (〜を含む、〜を含めて)、

lackック/lˈæk/ (〜を欠く、〜がない)、

valuableリアブル/vˈæljuəbl/ (貴重な)、

talentレントゥ/tˈælənt/ (才能)、

wasteウェイストゥ/weɪst/ (無駄にする)、

 

※ "waste" は "waist" (ウエスト、胴まわり)と同じ発音。スペリングの違いに要注意。

 

第4パラグラフ 

manageネッジ/mˈænɪdʒ/ (管理する)、

hardshipードゥシップ/hάɚdʃìp/ (困難)、

principal[プンスィパウ/prínsəp(ə)l/ (主要な)、

performance[パフォーマンス/pɚfˈɔɚməns/ (上演、演技)、

complete[カンプートゥ/kəmplíːt/ (完了する)、

typicallyティピカリ/típɪkəli/ (一般的に)、

receive[リスィーブ/rɪsíːv/(受け取る)

 

※ receive nothing (何もないを受け取る、受け取るものは何もない) =「何も受け取らない」の意味

 

rehearsal[リースウ/rɪhˈɚːsl/ (練習、リハーサル)、

prepare[プリ/prɪpéɚ/ (準備する)、

roleウウ/róʊl/ (役割)、

coachingウチン/kóʊtʃɪŋ/ (指導)、

sessionシャン/séʃən/ (演奏、講習会)、

cancelキャンスウ/kˈænsl/ (取り消す、中止する)、

insecurity[インセキュリティ/ìnsɪkjˈʊ(ə)rəṭi/ (不安定、危険性)、

systemスィステム/sístəm/ (仕組み、制度、体系)

 

第5パラグラフ 

problem[プブラム/prάbləm/ (問題)、

meetートゥ/míːt/((要求などに)応じる、満たす)、

demand[ディンドゥ/dɪmˈænd/ (要求、要望)、

audienceーディアンス/ˈɔːdiəns/ (観客、聴衆)、

 

※ "meet the demands of audiences who are 〜 " で、「〜 な観客の要望に応える」の意味。

 

influenceンフルーエンス/ínfluːəns/ (影響を及ぼす)

 

※ "be influenced by 〜 " で、「 〜 に影響される」の意味。

 

popularピュラア/pάpjʊlɚ/ (大衆の)

 

※ "popular" には「人気がある」以外に、本文で使われているように「大衆の」という意味もある。"popular culture" (pop culture) は「大衆文化」の意味。

 

entermainmentンタインメントゥ/ènṭɚtéɪnmənt/ (娯楽)、

pop singer (流行歌手、ポップ歌手)、

judgeジャッジ/dʒˈʌdʒ/ (判断する)、

basisイスィス/ˈbeɪsɪs/ (基準、根拠)、

on the basis of 〜 (〜 に基づいて)、

lookック/lˈʊk/ (見える)

 

※ "look" には、「見る」という意味だけではなく、「見える」という意味もある。

"how they look" で「彼ら (彼女ら) がどのように見えるか」= 外見がどのように見えるか(外見が良いか悪いか)という意味になる。

 

perform[パフォーム/pɚfˈɔɚm/ (演じる)、

expect[エクスクトゥ/ekspékt/ (期待する、求める)、

modelドゥウ/mάdl/ (モデル、模範)、

unrealisticンリアスティック/`ʌnrìːəlístɪk/ (非現実的な)、

possiblyッスィブリ/pάsəbli/ (ひょっとしたら、ことによると)、

harmfulームフウ/hάɚmf(ə)l/ (有害な)、

simplyスィンプリ/símpli/ (〈否定語と共に用いて〉絶対に)

 

※ "simply" は「簡単に」という意味で使うことが多いが、本文のように否定語と共に用いると否定を強める意味を持つ。次の例文を参照

例文:I simply don't believe it.  (とても信じられない)

 

fillフィ/fíl/ (満たす)

theaterスィーアタ/θíːəṭɚ/ (劇場)、

concertンサートゥ/kάnsɚ(ː)t/ (音楽会、コンサート)、

hallーウ/hˈɔːl/ (公会堂、ホール)、

microphoneイクロフォウン/mάɪkrəfòʊn/ (マイク)、

weightウェイトゥ/weɪt/ (体重) ※この単語は "wait" (待つ) と同じ発音

emphasizeンファサイズ/ˈɛm.fə.saɪz/ (重点を置く、重視する)、

physicalフィズィカウ/fízɪk(ə)l/ (身体の)、

appearance[アアランス/əpí(ə)rəns/ (外見)、

ability[アリティ/əbíləṭi/ (能力)、

causeーズ/kˈɔːz/ (〜 を引き起こす、〜 の原因となる)、

miss/mís/ (失敗する、逃す)

 

※ miss out on 〜 で、「〜 の好機を逃す」の意味

 

第6パラグラフ 

solution[ソーション/səlúːʃən/ (解決、解決策)

 

※ 日本語では「ソリューション」と発音することが一般的だが、英語との発音の違いに注意しよう。

 

opinion[オニオン/əpínjən/ (意見、見解)、

valueリュー/vˈæljuː/ (価値)、

registerジスタア/rédʒɪstɚ/ (登録する)、

develop[ディロップ/dɪvéləp/ (開発する、発展させる)、

special[スシャウ/spéʃəl/ (特別な)、

factファクトゥ/fˈækt/ (事実)、

survive[サイブ/sɚvάɪv/ (生き残る、切り抜ける)、

obstacleブスタクウ/άbstəkl/ (障害)、

continue[カンティニュー/kəntínjuː/ (続ける)、

attract[アトゥクトゥ/ətrˈækt/ (魅了する)、

risingイズィン/ráɪzɪŋ/ (成長中の、発達中の)、

generationジェイション/dʒènəréɪʃən/ (世代)、

 

※ "rising generation" で「若い世代、青年層」の意味

 

demonstrateマンストゥレイトゥ/démənstrèɪt/ (実証する)

remain[リイン/ɹɪˈmeɪn/ (存続する、〜のままである)

respect[リスクトゥ/rɪspékt/ (尊敬する)